日本酒に関する卒業論文の裏側

序論 はじめに

 本記事は多分割と長めになります。お時間に余裕をもってお読みください。

 また、事情が事情なので詳細は多少伏せています。ご了承ください。

 そして、この記事の中での「日本酒」には「みりん」や「合成清酒」は含んでおりません。

 

第一章 この卒業論文を書くことになった経緯

 私が日本酒を好きになった経緯は省略します。そっちはまぁいいでしょう。

 さて、私は大学で主に「現代日本語学」について研究を行っています。

 ちなみにどんな内容かというと「手を拱く」は何故、いつごろ「こまぬく」から「こまねく」に変化したのかとか、「お昼」とは言うのに「お朝」「お夕」「お晩」はあまり使わないのかなど難しい話をあえてチョイスしましたが、そんな感じです。

 そして、その所属しているゼミは割と卒業論文に関してはフリーダムでして、周りにはゲームのモンスターの名前とかシャンプーの香りの表現とかで研究している人が居ました。もちろん教授が書けるかどうかの判断はしますが。

 そんなわけで、じゃあ好きな日本酒で書けないかと考えた結果、日本酒の銘柄なら割とやれるんじゃないかと思い書き始めたわけです。

 

第二章 卒論の内容などについて

第一節 収集方法について

 内容に入る前に収集方法について少しお話します。

 私はアホなので、地域を限定せず、日本全国の酒蔵の銘柄について調査を行いました。つまり1400ぐらいの酒蔵について調べたわけです。

 情報の正確さが論文では必要になるので、今回はホームページ上において各都道府県の酒造組合に掲載されている酒蔵で、かつ酒造組合か公式から銘柄が確保できるもののみが対象となっています。

 じゃあ酒造組合って情報の正確さが保障されているのか?という点ですが、国税庁および、その下部組織の管轄になっているので一定の正確さはあるでしょう。

 「酒蔵に協力を依頼したら?」という点については教授と相談の結果「協力を依頼しなくても出来るのならそっちの方がいい」ということでなくなりました。

 結論としては一週間ほどで約1300蔵4000銘柄程度集めました。手と目が死にそうです。

 4000銘柄についてはシリーズものは統一してるので、それも含めると増えるでしょう。

 

第二節 調査について

 中心としたのは銘柄の傾向についてでした。まぁ簡単に言うと「これぐらいの文字数が多いよ」とか「こんな名前の銘柄が多いよ」みたいなものです。

 まぁぶっちゃけ日本酒の銘柄で学生の語学研究上出来ることはそれぐらいです。というか私の周りもだいたいが傾向調査でした。

 Excelに収集した銘柄を全て移動して、文字数で分解したり、要素で分解したり、品詞で分解したりというのを全銘柄で延々とやってました。

 由来も調べないといけないことが割と辛かったですね。公式には書いてないけど、個人ブログには書いてあるものはどうするかとか、公式と自称蔵人の知り合いで言ってることが違うとか。

 とはいえ好きな日本酒についてやったことに関しては正解でした。辛かったですけど、そもそも趣味の範疇みたいなものなので、投げだそうと思ったことはなかったです。投げだしたら卒業は出来ませんが。

 そんなこんなで色んな観点から銘柄についてアプローチをしました。

 

第三章 分析の結果

 論文と同じことを書いても面白くないので、書けなかった所感について色々書きます。

 

第一節 「正宗」について

 まず「正宗」についてですが、非常に少ないです。全体の約1~2%程度です。

 とあるところが約5年前に百数十蔵が出してる!って書いてたんですけど、2019年12月現在で約60銘柄ほどです。で、酒蔵の減少傾向からいっても5年前に百数十蔵も出していたとはちょっと考え辛いので、どんな調査したのか聞きたいレベル。

 もちろん「正宗」の製造を中止した可能性もありますが、それでも約5年で50蔵も消えるのか?という疑問は残ります。しかも百「数十」と言ってるので百は越えてるんでしょうね。もうよくわかりません。

 とにかく、「正宗」は有名かもしれませんが全体としては非常に少ないです。

 ですので、もし日本酒を製造する予定のある人が居ましたら「正宗」と命名するのはそこまで一般的ではないと覚えておいてください。ただしデータ上なので、消費者がどう捉えるかについては別問題です。

 

第二節 外来語について

 次に、外来語(ここでは日本語表記以外全てを指す)は増えてきてますが、日本語のアルファベット表記が多かったです。

 特にアルファベットなど外来字かつ外来語で表記されている銘柄は30ぐらいしか存在せず、日本語のアルファベット表記の方が多い傾向でした。

 恐らくですが、海外への輸出が増えているとはいえ「日本」酒という名称であるがゆえに、日本語の方がウケがいいのでしょう。

 オーク樽などが増えてきている印象があるので、これから増えるかもしれませんが、全体の製造量も減っているのでなんとも言えないところではあります。

 

第三節 その他

 調査していて割と変わった銘柄もありました。

 「越前かにとおろしそば」とか「たこ焼きに合うお酒」とか「ずーっと好きでいてください」とか。

 上記3つは特に記憶に残っていた銘柄です。端的に表現して、短い銘柄が多い中、そのまんまの表現の銘柄もあるというところでちょっと衝撃的でした。

 ある意味パンチが効いていますし、何より飲んでみたくなるタイプのお酒ですね。

 とはいえ覚えていられるかと問われると恐らく難しいでしょう。実際、打ちながら「これで合ってたっけな」って確認したほどです。

 長いと覚えにくいですが、命名によっては関心を惹きます。一方で短いと覚えやすいですが、関心を惹かれにくいでしょう。

 どっちがいいかというと微妙なラインです。ですが、今の傾向としては短い方がいいようです。覚えやすさ重視でしょうね。

 

第四章 最後に

 流し読みにせよ、ちゃんと読んでいただいたにせよ、最後までお付き合いありがとうございました。

 論文については教授と相談の上、公開できるのであれば公開したいと思っています。

色んなデータがあるので少しでも日本酒業界に貢献が出来ればと。

 結論としては楽しかったです。知らない銘柄といっぱい出会えましたし、私にとっては飲んでみたいと思う銘柄が増えたのは人生の楽しみが増えたと同義です。

 みなさまの日本酒ライフにも幸あれという形で今回は締めさせていただきたく思います。